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Incesto

近親相姦








  




「あぁあ、受験とかかったりぃな~」

大股で地面を蹴るようにして歩いていた正則は、空を見上げながら近頃口癖になっている言葉を誰に言うでも無くつぶやいた。

「お前はもうちょっと真面目にやらねば猿でも入れると言われてるK短ですらやばいんだろう」

正則を横目で見ながら三成が冷たくいい放った

「うるせぇ!俺はお前みたいな頭でっかちとちがって他に考える事があるってんだッ!」

いつもの二人のやり取りを聞いていた清正は横でふっと鼻を鳴らした。

「一人大人ぶってんなってよぉー、お前はどうなんだよ」
「俺か?俺は志望の大学には入れそうだ」
「チェーッ!あぁぁーーー!!つまんねぇ!」

頭をがしがしと掻きながら鬱憤を晴らすように大声を出した後、正則はにやりと笑って清正に顔を寄せた。

「なぁ、今日久々にやらないか?受験勉強もたまには息抜きが大事だろっ?」

そう言いながら正則は両手を前に出してゲームのコントローラーをいじる動作をしてみせた。

「暢気だな……」
「お、頭でっかちは嫌なら別に来なくていいんだぜ!なぁ、清正!明日土曜だぜ、たまにはいいだろ?」
「仕方ないな。じゃあちょっとだけ」

パッと正則の表情は明るくなる、そんな正則に呆れ顔の二人もまんざらでもなさそうだ。
かくしていつもの仲良し三人組みは清正の家へと足を向けた




――が、清正の家の二軒手前で

「あら、清ちゃんお帰り」

幼い頃から家族ぐるみで付き合いのある近所の主婦が声をかけてきた

「おばさん、ただいま」

笑顔で清正が返すと、何やら意味ありげに彼女は笑んでいる

「清ちゃん、今日ね……」
「な、なんですか?」
「お兄ちゃんが帰ってきてるわよ!お母さんがさっき今日はご馳走だって言って買い物に出かけて行ったわ」
「え?!ほ、本当ですかっ?!」

その言葉に先ほどの正則以上に清正は目を輝かせて身を乗り出した。それに反比例するように三成と正則はガクリと肩を落とした。

「悪い、三成、正則……」

そう言うと清正は両手を合わせて二人に頭を下げる

「えーー!!俺の週末の楽しみ、どうしてくれんのッ?!」

「全く、お前のブラコンは度が過ぎる!!」

二人は思いっきり不快な表情をして見せるが、頭を下げて謝る清正は気まずさ以上に兄に会える喜びに顔が緩んでいる。

 清正は自他共に認める超がつくブラコンなのだ。就職して兄が遠くへ行ってからというもの特にその傾向が強くなった。
 兄が帰って来るとなると親友と予定があろうが、彼女と予定があろうが全てキャンセルで兄との予定を優先させるのが常なのだ。健全な高校生とは思えないと周りからはいつも指摘されるのだが、本人はそんな言葉歯牙にもかけない。清正にとってはこの兄との時間が何よりも大事なのだ。
 しかし、何もこの清正の重度のブラコンは清正だけに原因があるわけでもない。
 歳が二つ、三つ離れた兄弟なら殴り合いなどして普通に育ったろうが、清正が生まれたのは清正の兄が六歳になった頃だった、クリスマスにはサンタクロースに弟が欲しいとお願いしていた兄は清正が生まれてからというもの、まるで自分が母親か父親であるかのように大興奮して大喜びし、何かというと清正をを甘やかしかわいがった、そしてそれはこの歳になっても相変わらずなのである。
 小学生の頃は兄ちゃん兄ちゃんと兄を追いかけまわしていてが、中学生になるとクラスメイトの目を気にするようになった清正だったが、高校に入ると再び開き直ったように兄が居る時は兄にべったりなのだ。

「本当悪い、月曜昼おごるから!じゃッ」

正則と三成に適当に挨拶をすませると、跳ねるような勢いで清正は家に飛び込んで行った。

「俺ちょっとあいつの将来が心配になるときがあるわ」
「珍しく同意見だ……」

残された正則と三成は憮然としてため息をついた。




「兼続っ!!」

ドアを開け、勢いよく家に飛び込んだ清正、靴を脱ぐ間ももどかしいというように玄関から兄の名を叫んだ。
台所の引き戸がガラリと開いて向こうから兄の兼続がひょこりと顔を出した

「清正、お帰り」

そう言ってにっこりと微笑む兼続に、なんとか靴を脱いで駆け寄った清正は抱きつかんばかりの勢いである

「どうしたんだよ急に、帰って来るなら連絡入れろよ!週末はずっと居るんだろう?明日どうする、明日ッ?!」

畳み掛ける清正に兼続はまあ落ち着けと座るように促した。

「実は今週末はずっとはいられないんだ。土曜の夜から予定もあるし、明日の昼には帰る」
「なんだよ……」

清正はガックリと肩を落とした。

「まぁ、そう落ち込むな。そのうちまたゆっくり帰ってくるから。今日は出張でちょっと近くまで来たのと、父さんと母さんに話があってな……」
「話って?」
「ん、まぁ。また夕飯の時に話すよ。所で、お前受験勉強の方はどうなんだ?」
「ん、ああ、順調。志望の大学には行けそう。でも、俺は兼続と違って頭悪いからいい大学じゃないけどな」
「何言ってるんだ。お前は賢いぞ!そうだ、夕飯までの間、久々に勉強見てやろうか?」
「お、おうっ!」

清正は嬉々として二階に上がると兼続を自室に招き入れた
それから夕飯の時間まで、二人はあれやこれやと久々の再会を喜び話に花を咲かせ結局は勉強どころではなかった。







「で、仕事の方はどうなんだ、最近は忙しいか?」
「はい、でもやりがいがあって楽しいですよ父さん」

夕食のテーブル、父親も久しぶりに家族がそろった事に上機嫌で酒の量がいつもより少し多い。それに大学生時代は二十歳を超えていても酒を息子に勧める事はしなかったが、就職してからは同じ大人と認めてか、父親が兼続に酌をしたりもするようになった。

「兼続はすごいよな、日本でなら知らない人のいないような一流企業で入社一年後には昇進だもんなぁ」
「何言ってるの清正、あなた達兄弟なんだから、お兄ちゃんにできる事は頑張ればあなたにだってできるわよ」

そう言って母親はにこにこと笑っているが、清正は納得しかねるような顔で兼続を見つめる。

「あ、そう言えば兼続。お前父さんと母さんに話しって言ってたあれ何?」
「ん?あぁ、そうだ」

母親と父親は顔を見合わせている

「父さん、母さん、先日の話ありがたいのですが……お断りをしたいと思って」

兼続はそう言って父親の方にすまなそうな視線を向ける。
清正は先日の話とは、と首をかしげる

「お、そうか。いや、お前が駄目だと言うなら仕方ないな。ただ母さんも父さんもお前は仕事なんかに打ち込み出すと他の事に気がまわらなくなると思ってだな」
「先日の話って何なんだよ?」

一人話しが見えない清正は父親の言葉をさえぎって身を乗り出した

「父さんと母さんがな、私に見合いの話を持ちかけてくれたんだ」
「え?」
「私もそんな事を考えてもいい歳ではあるんだけどな、ただ今はもう少しだけ仕事に打ち込みたいと思って」

そう言いながら清正から母親と父親に視線をうつして様子を伺うようにする兼続

「まあ、今時そんなに急がなくてもいいですしね、じゃあ今回は……」
「何で俺だけ蚊帳の外なんだよッ!!」

突然大声を出した清正に三人は驚いて箸を止めた

「清正、蚊帳の外ってこれは私の……」
「なんだよ、父さんも母さんも、俺にも一言ぐらい相談してもいいんじゃないか、そんな話!」

一時呆然としていた三人だったが、母親が箸を持った手を口元にあててプッと噴出した

「嫌だ、清正。今からこれじゃ兼続のお嫁さんになる人は大変ね。舅、姑より小舅が怖いです、なんて実家に報告されちゃうんじゃない」

母親のその言葉に、兼続と父親も笑い出した。
だが清正は全く面白くない。バンッと箸を机の上に置くと台所から出て行ってしまった

「もう、清正ったら。お兄ちゃんの事になると……」






 バンッと八つ当たりをするように自室のドアを閉めると清正はベッドの上にゴロリと寝転んだ。
 全く母親に笑われるのも仕方がない、別に決定したわけでもない兄の見合い話をわざわざ弟の清正に報告しなければならないなんて事は全くない訳で……
 それはわかっているのだが、どうも面白くない。
 兼続も24歳だ。結婚なんて言葉がちらついても何らおかしくない歳だし、昔からそういった方面で晩生な兼続には未だに彼女の一人もいた事がないだろうと清正ですら思っているのだから両親がそんな心配をするのも無理は無い。それに兼続に彼女が出来ないのは単に兼続が晩生だからではない。清正に対してはどこまでも甘く優しい兄だが、世間での兼続の評判はそうではない。厳しそうでちょっと怖い、近寄り難い、真面目すぎる、そんな理由で町を歩けば人が振り向くような美形ではあるのに、言葉を交わしてみると敬遠されてしまうという傾向にある、女性と知り合う機会があっても恋愛なんて甘い方向に話が進む事など到底ないであろう事が容易に想像できる。
 弟としてそんな兄に見合いの話があったとなれば、喜ぶべきなのだろうが清正は全くそうは思えなかった。いや、むしろ今までその人を寄せ付けないような兼続の性質に自分だけが兼続に甘やかされて、こんなにも愛されているという優越感すら抱いて安心していた事に気付いた。
 兄は今回の見合い話は断ると言っていたが、歳を考えればこの先職場の上司からそんな話が持ち込まれる機会などもいくらでもあるだろう、そんな事を考えていると気分が滅入ってきた。

そこへ静かにドアを叩く音がした

「清正、入るぞ」

ドアの向こうで兼続の声がする。なんだかとても情けない醜態を晒している気分だが、入るなと拒否する事もできず黙ってドアを開けた。

「どうしたんだ?驚いたぞ」
「悪い……」
「別に父さんも母さんもお前に秘密にするつもりだったわけじゃないぞ」
「分かってるよ」
「それに私も。今度からはそんな話があればお前に一番に教えるからな」

まるで子供を諭すようにそういうと兼続は清正の頭を撫でた

「と、言ったからにはお前に秘密にしてるのは駄目だな」

そう言ってにやりと兼続が笑う

「え?」
「実は、見合いを断った理由なんだが、父さんと母さんにはああ言ったけど……」

そこまで言うと兼続は少し頬を赤らめた

「最近付き合い出した……と言っていいのか、まだそこまではいってないんだが、まぁそんな感じの人がいる」
「は?」
「これはお前にしか言わないからな、父さんと母さんには秘密だぞ」


 その後、兼続がどんな話をしていたのか清正は全く覚えていない。ただただ兼続に付き合っている人がいるという事実が衝撃すぎて、何を聞いても右から左だった。
 兼続がもう寝るからと部屋を出た後も清正の頭の中はその事でいっぱいだった。
 上司に勧められて見合いがあればなんて心配をしていたら現実はもっと最悪の事態、兼続が自ら恋人をみつけ顔を赤らめてその話をするぐらいだから、当然二人の関係はうまくいっていて人並みの恋をしているのだろう。
 

――落ち着かない、眠れない


 何度も寝返りをうちながら結局一睡も出来ぬまま最悪の気分で朝を迎えた。
 昼近くなっても起き上がる気力がない清正がそのままベッドで悶々としていると、また兼続が部屋にやってきた。

「清正。昨日も言ってたが、今日は予定があるからもう帰るな」

そう言うとポケットから財布を取り出して二万円を清正に差し出した

「何だよこれ」
「小遣い」
「なっ、いらねぇよ!」
「嘘だ、今度こっちに遊びに来い、その時の交通費だ。だが、お前も受験勉強があると思うから……夏休みの夏期講習の中休みぐらいにちょっと、な。所でこんな時間まで受験生が寝てたら駄目だぞ」

そう言ってにこりと笑うといつものようにガシガシと頭を撫で、部屋を出ていった。

「バカヤロウ……」

兼続に言いたいのか、自分に言いたいのか分からないままそうつぶやくと日の光を避けるように再び布団にもぐりこんだ。






翌週の金曜日、学校から帰った清正に母親があわてた様子で話しかけてきた

「清正、実は熊本の叔母さんが急に亡くなってね、お父さんとお母さん今夜の飛行機で熊本に行く事になったから、あなた週末一人になるけど大丈夫ね」
「え、叔母さんが?」
「そうなの、この間まで元気だったのに、脳梗塞ですって……」

清正も小さい頃に何度か遊びに行った記憶がある。父親の姉の事だったが清正が中学校にあがって以降はめっきり会っていなかったものだからいまいち印象が薄い

「今晩の夜ご飯と明日の朝昼は用意してあるけど、明日の夜は自分で何かするのよ。隣のおばさんにお願いしてもいいけど」
「餓鬼じゃねぇよ。いいから早く準備しな」

慌しく家の中を駆け回りながら食事の心配をする母親に一言言うと階段を上がって自室に入った。


――明日の夜…、三成と正則でもさそって食いに行くかな

 そう思いながら携帯のメールを打とうとした指が止まった。
 そしてその手は目の前にある勉強机の引き出しの一番上を開けると、先日兼続が置いて行った二万円を取り出した。

 明日の朝一の新幹線に乗れば昼前には兼続の家に行ける。土曜に一泊して日曜の夜に帰ってこようか、急にそんな事を思った。

 実は清正は先週の兄の告白以降まともに勉強も手につかず、夜もあまり眠れていない。
 さすがに付き合いの長い正則や三成は何かを悟ったようで兄貴と喧嘩でもしたかとからかってきたが、いくらブラコンの自覚がある清正でも兄貴に彼女が出来た事が気に入らないから苛立っているとは言えず、からかいながらも心配顔を見せる正則達をうるさいと一掃していた。
 だが、いつまでもこんな状態では受験勉強にも支障が出るし、友人にも悪い、そして何より自分自身の精神が疲弊していく。何とかしたいと思った。

 しかし、行ってどうするのだという思いもある。兼続の所に行って彼女に会って、気に入らなければ別れろと迫るのか?もし本当に清正がそんな事を言ったなら兼続はどんな反応をするのだろうか?弟として、あんなに嬉しそうに「付き合っている人ができた」等という兄を見れば素直に祝福してやればいい話なんじゃないだろうか。

頭の中で目まぐるしく色々な思考が過ぎてゆく。
清正はそれら全てを振り払うようにバンッと机を叩くと――明日俺は兼続の所に行く、そう心の中で呟いて顔を上げた。







翌日

早朝に家を出た清正だったが、新幹線を降りてからローカル線を乗り継いでいると結局兼続の住むマンションに着いたのは正午になった。
兼続には来る事を伝えていなかった。行くと言えば何故今日なのか、もっとゆっくりできる連休にでも来ればいいと説得されてしまいそうだと思ったからだ。

 白い小さめのマンション、最上階の808号室。一度兼続の引越しを手伝いに来たきりだった部屋を思い出しながら清正はチャイムを押そうと手を伸ばした。と、そこへ中から人の気配がした、しかもそれは明らかに一人ではなかった。なんとなく焦って今上ってきた階段までかけ戻ると厚いコンクリート製の手すりに身を潜めた。
 ガチャリと兼続の部屋のドアが開いて男が出てきた、会社の後輩だろうか。
 例の『彼女』が出てくるのではないかと思っていた清正はなんとなくその姿を見て安心した。

 その男がドアを抑えていると、続いて兼続が出てきた。男は兼続が部屋を出るとドアを閉めてポケットから取り出した鍵でドアをロックした。二人は顔を見合わせて笑い合い、兼続より少しだけ背の高いその男は兼続の髪を軽く撫でるように触れた。

 例の『彼女』ではなかった事に一瞬は安心したものの、清正は男の行動に苛立った。何故兼続の部屋の鍵をあの男は持っているのか、兼続が清正以外の人間にあんな風に体を触れさせるなんて事も信じられなかった。

 二人は談笑しながら階段の方に歩いてくる。まずいと思った清正は背をかがめたまま一つ上の階に駆け上がった。どうやら二人は出かけるようで下へと降りていく。


 遊びに来たのだと二人の目の前に出ればいいのに、どうせ兼続は清正の方を優先してくれるはずなのだ。だが、なんとなくそれが出来ないまま、清正は少し離れて様子を伺いながら二人の後をつけた。

 兼続はよく笑っていた。
 あんな笑顔は自分にしか見せないのかと思っていたのに。高校生の時も大学生の時も友人と居ても、いつもどこか難しそうな顔をして心底楽しそうに笑う事はない兼続だったのに、家を出てからの兼続は変わってしまったのか、そう思うと清正は自分の知らない兄がいることに寂しさを感じた。兼続は自分に対してだけは特別なのだという思いが揺らぎだし、それに言葉にできないような不安が心の奥底から湧き上がってくる。



 男と兼続は昼食を済ませると新緑の生茂る公園へと足をはこんだ。休日を楽しむカップルや親子連れで園内は賑やかだった。その喧騒を避けるように二人は木立の間を歩んでいく。清正も情けない思いがしつつ、二人から目を離す事が出来ず後をつけた。

「このあたりで座りましょうか」

 周りが少し静かになったので、かすかに男の声が聞こえた。
 兼続はうんと頷き促されるままに座り、しばらくは何事かを二人で話していたが、はっきりとは聞こえてこない。
 と、そこへ男が兼続の背へ手を回して自分の方へ引き寄せるようにした、驚いたように見上げた兼続の顔に男はさっと手をそえると、その唇へ口付けていた。

「なッ!」

 清正は思わず声を出してしまった。幸い二人には聞こえていなかったようだが、清正は跳ね上がるような自分の鼓動がうるさい程に感じられた。



 兼続は男を制するように男の胸に手をついたが、本気で嫌がる様子はない。むしろ照れて笑っているような様子である。

 一瞬にして熱くなった清正の体は今度は一気に熱が引いて冷たくなっていった。ジワリと首筋や背中を伝う冷や汗、混乱した頭を整理する為清正はその場を離れた。





→(注!性描写あり)