半蔵×兼続
後編A
※本作品において、半蔵の一人称は「拙者」ではなく「俺」です。
※本作品には、男性向け18禁並のハードな性描写、女体化表現があります。ご注意下さい。
ー やめて…!! ー
絶頂に行き着く寸前に、兼続の必死の叫びで正気に戻った半蔵は間一髪、兼続の体内から己の一物を引き抜き、兼続の腹の上に精を放った。
ー 俺は……何故あんな…… ー
射精後の冷えた頭で半蔵は考えた。いくら快感の中にいたとはいえ、今日初めて女と知った兼続を孕ませたいと思い詰めるなど、普段の自分ではあり得なかった。兼続は美しい女だし、半蔵の愛撫に恥じらいながら乱れていく様は可愛かった。だからといって兼続と恋仲になったとは思っていない。あくまでも脱出の為にした事であり、今日この場限りの情交なのだ。改めて思えば、半蔵の胸に一抹の寂しさがよぎった。
「すまん……どうかしていた」
「いや、いいのだ……」
気まずい沈黙に包まれる。
「半蔵…手を貸してくれぬか」
気まずさを振り切り、兼続は半蔵に声をかけた。兼続は汚れた身体もそのままに横たわっている。起き上がりたいが、疲労に指一本動かすのも億劫なのだろう。半蔵は兼続を抱き起こしてやり、そのまま抱きしめた。兼続は力なく半蔵の胸に身を預けていたが、しばらくすると、もう大丈夫という風に半蔵の胸を軽く押した。抱く腕を解いてやると、這うようにして祭壇の前に行き、座った。
祈り始めると、全裸にもかかわらず兼続は近寄りがたい威厳を纏った。身体も一回り大きく見える。その様子を見た半蔵は、これでほこらから解放されるのだから身仕度をしなければならないと思い、下帯をしめようとした。が、何やら兼続の様子がおかしい。
「……何故です…約束が……そんな!?御無体な…」
まさか…半蔵の嫌な予感は当たった。
「は、半蔵、困った事になった。……私の体内にお前の精を放たなければ、契りを交わしたとは認めぬ、と神はおおせだ…」
暗い顔で兼続が言った。
「……なら、もう一度するか?必ず孕むとは限らん」
「だめだ!!!」
兼続の剣幕に半蔵は驚いた。
「意識しすぎだ。毎回必ず孕んでいたら、人の妻は年中腹が膨れていよう。むしろ孕むほうが稀だ」
さきの交わりが気に入らぬと言われたのだから、多少の危険も覚悟して、子づくりの体裁をとらねばならないだろう。兼続は腹の中に精を出されるのを怖がりすぎている、と半蔵は思った。
「だ、だめだ!!必ず孕んでしまう!!………確信が、あるのだ」
兼続のあまりの必死さに、半蔵もこれ以上強くは言えなかった。ならば、どうするか。
「お前の体内に俺が精を放つ事が契りなら……一つ、方法がある」
半蔵がそう言い出したので、兼続はほっとした。孕まずに神の無理難題に応じる策を、兼続は思い付けなかったからだ。
「俺の言う通りにしろ…できるな?」
「わかった、何でもしよう」
それが安請け合いだと、兼続はすぐに思い知った。半蔵が身につけたばかりの下帯をもう一度脱ぎ、一物を兼続の眼前に突きつけて一言、
「舐めろ」
兼続は仰天した。舐める!?性器に口をつけろと言うのか?男の一物は用を足す為の物でもあるのに…いや、しかし…
「男女の営みでは、こんな愛撫もある。嘘は言わん」
兼続の動揺を見て、半蔵が言った。が、そう簡単に男の一物に手を伸ばす事などできない。兼続がためらっていると、半蔵は業を煮やした。
「……仕方ない、手本を見せてやる」
祭壇の前に座る兼続を抱き上げ、敷き布代わりの小袖にもう一度横たわらせた。
「ちょ、ちょっと待って…」
「待たない」
兼続は足をばたばたと動かして抵抗する。先ほどまで淫らに絡み合っていたのに、まるで生娘に戻ってしまったような兼続の慌てぶりに、半蔵は苦笑してしまう。これではもう一度、最初から愛撫を施さねばなるまい。甘い唇(これはすっかり半蔵の気に入りとなってしまった)を吸ってやると、兼続は途端に大人しくなった。半蔵が兼続の顔を覗き込むと、うっとりと見つめ返してくる。最初は泣いて怯えていたのに…口づけが気に入りなのは、兼続も同じなようだ。
半蔵は唇を使った愛撫を兼続の全身に施して行く。鎖骨を甘噛みし、乳房を頬張る。半蔵の口中で硬くなった乳首を舌で転がすと、舌の動きに合わせて兼続が腰を振ってきた。
「あああ、うんっ…悦い…んーっ…」
素直に悦び、悶える女の可愛さに、半蔵の雄の本能が狂暴に燃え上がりそうになる。それを押さえつけながら、半蔵は不思議な感慨を覚えていた。
半蔵の筆をおろし、色事のいろはを教えこんだ伊賀の女忍の口癖は、「男の振る舞いたいままに振る舞えば、女は必ず苦痛に思うもの」だった。彼女と寝た者は、どんな秘密も包み隠さず白状させられると評判の、一流の忍だった。口の吸い方、乳房の揉み方、様々な体位から挿入を果たした後の突き上げ方まで、力加減を厳しく教え込まれた。「そのように乱暴にしては、女子は貝のように心を閉ざしますぞ!」と、何度叱られたか。相手を確実に絶頂に導き、陥落させる為に絶えず自制し、観察を怠ってはならないと教えられた。師の言葉に従えば、必ず相手は白目を剥いてよがり狂った。教えに背けば、結果は思わしくなかった。だから、半蔵は師の教えを忠実に守ってきた。
「あ!い、嫌っ!」
兼続の脇の下に鼻面を突っ込み、舌で舐め、汗の匂いを嗅ぐ。兼続は羞恥に赤面している。兼続の脇に生えた毛を口に含みながら、半蔵は笑う。
抱きしめるのも、口づけするのも、相手をからめ取る為に有効と判断した時に行った。色事は、半蔵にとって特に気疲れする務めに過ぎなかった。だが、この女を抱いていると、自分も男の悦びを感じる。欲望に我を忘れるなど、未熟な忍びであった少年の時以来、久しく犯さなかった失態だった。兼続相手には、成否をさして気にせず、時に意地悪くしてしまう。それでも、素直な兼続との情交が、半蔵には楽しくなっていた。
脇の下や二の腕を甘く噛んでいた男の唇が、今度はへその周りをさまよう。濃厚な愛撫にうっとりと身を委ねていた兼続は、半蔵の「手本を見せる」という言葉を忘れかけていた。だが、半蔵の指が、兼続の恥丘に生えた真っ直ぐな毛と戯れ始め、
― ああ…もうすぐ、際どい所に届いてしまう… ―
兼続は、自分が出掛けに小用を足した事を思い出した。
「ちょっ…ちょ!!待った!待ってくれ!!」
「待たない」
「待って!!待ってーーっ!!!」
前にもましてばたばた暴れだした兼続に、半蔵も愛撫を中断せざるをえない。
「何だ」
「わ!私はっ!出掛けに用を足してきてだな!」
「?…それがどうした」
「紙で拭いただけなのだ!水!竹筒の水で洗わせてくれ!」
半蔵がうつむいた。そのまま顔を上げない。怒らせたのか?最初の情交で言わなかったから…兼続は青くなった。
「…っ……ふ、……くくくっ…!」
半蔵は肩を震わせて笑っていた。
「市井の百姓たちは、そんな事、気にはせんぞ…ふふっ」
言うなり、半蔵は股ぐらに顔を埋めた。大きく口を開け、割れ目をすっぽりと覆う。
「ああああっ!?」
兼続は悲鳴を上げた。股を閉じようにも半蔵ががっちりと押さえつけている。指先で割れ目を左右に開き、半蔵が舌を突っ込んでくる。肉の真珠に吸いつかれ、兼続はのけ反った。半蔵は顔全体を兼続の秘所に強く押しつけて、顔を左右にふった。ぐりぐりぐり。掻き分けられ、すりつぶされる。全身を突っ張らせて兼続は悶えた。小用の為の尿道口から膣口の周りまで、敏感な桃色の肉をたっぷりと舌で犯され、神経が焼き切れそうな羞恥と快感が兼続を襲う。
「おおおっ…おおおお!…あ、あああ〜っ…」
兼続は自分の口から舌が飛び出て、獣の咆哮が迸るのを止められなかった。口を閉じる暇のない兼続に半蔵は容赦なく追い討ちをかける。鞭のようにしなる舌で肉の真珠をいたぶりながら、膣口に指を差し入れ、抜き差しする。愛液でびしょ濡れのそこは、ちゅこちゅこと音をたてた。
’ちゅこっちゅこっちゅこっちゅこっ…‘
「ああっ…も、も、もうっだめ…許し」
’ちゅここここここここっっ!‘
「あひいっ!あひいいいいいいいいいいい!!!!」
糸の切れた人形のように、兼続の全身から力が抜けた。みっともなく叫ぶのを止められなかったのが嘘のように、声が出ない。下半身の感覚もない。頭の中は真っ白で、快い脱力感に包まれている。
「悦かったか?」
…言われた事が理解できない。兼続は覗き込んでくる男の顔をぼんやりと見つめた。
「…可愛かったぞ」
よくわからないけれど、半蔵の機嫌がいいのが嬉しかった。兼続はにこ、と微笑んだ。
「口を開けてくれ」
兼続の唇を優しくさすりながら、半蔵が言うので、兼続は精一杯口を開けた。実際には、わずかに唇が緩んだだけだったが、半蔵がそっと親指を差し込み、兼続の口を縦に開かせた。無防備な濡れた舌をなぶりたくなったが、半蔵はぐっと耐えた。
「くれぐれも、歯を立ててくれるな」
半蔵は兼続の胸の辺りをまたぎ、天を突くほど反り返った一物を兼続の唇にあてがった。一物の先端から先走りがたらたらとしたたっている。兼続は舌を伸ばし、ちろ、とそれを舐めた。
「く、……」
半蔵が悩ましくうめく。一物が生き物のようにひくついた。
「唇でしごきながら、舐めてくれ…」
兼続の口に、己の一物をゆっくりと差し入れ、兼続の喉を突いてしまわぬよう、細心の注意をはらって腰を動かす。
あれほどためらっていたのに、いざ、口にしてみると忌避感はあっさりと消し飛んだ。もっとも、一度半蔵に絶頂させられ、夢見心地の内にくわえさせられなかったら、未だにぐずぐずしていたに違いない。兼続はもう正気を取り戻していた。口と舌で半蔵の形をたどり、確かめるのが楽しい。茸の傘のようなくびれを舌で舐め回すと、ぴちゃぴちゃと濡れた音が口中に響く。唇で一物をしごけば、じゅぽっじゅぽっと、もっと卑猥な音がした。
「くうっ…ふっ…」
一物が震え、半蔵が低く喘ぐのが、たまらなく色っぽかった。半蔵の一物に付いた小水を舐めてしまったかもしれないが、かまうものか。半蔵は確実に兼続の小水を舐めたのだ。自分だけ拒むのは不公平というものだ。
ー 半蔵、気持ちいいか? ー
目で問えば、半蔵が微笑んで、うなずいた。半蔵の全身は汗に濡れている。快感に身体が火照り、吹き出たのだ。兼続は嬉しくなった。
もう、兼続にも「孕まずに精を受け止める方法」がわかっていた。覚悟はできている。自分の手…いや、口で半蔵を絶頂させてやりたい。歯をたてないように口を開け放すのは骨が折れたし、息苦しさにえずきそうになる。が、女の方が男を愛撫し、責め苛む方法があると知って、兼続は満足していた。
「うっ……うっ…か、兼続、……出るぞ…!」
「んっ…んっ…」
兼続が必死に舐めしゃぶり、唇をすぼめて半蔵を責めたので、いよいよ半蔵の声が切羽詰まってきた。これは…!と、思い、兼続は思いきって、一物の先端を激しく吸った。
「ぐ、お!おおおっ!」
「!?ん、む、んんんー…」
耐えきれない、というように、半蔵が咆哮し、兼続の口中で一物が弾けた。反射的に半蔵が腰を押し込み、兼続の喉深くに注ぎ入れようとする。兼続は逃げず、逆に挑みかかるように半蔵の尻を掴んだ。勢いよくほとばしる精汁をこぼさぬよう、一気に飲み干した。塩辛い後味がしたが、気にも止めない。
ー 神よ!照覧あれ!私はこの男と契りを交わしましたぞ!! ー
兼続は心の内で高らかに宣言した。山の神に届いているはずだ。
半蔵は、そよ風を肌に感じ、はっと顔を上げた。薄暗いほこらの中ではなく、陽光の下に二人はいた。慌てて辺りを見回す。二人が脱ぎ捨てた着物も、得物の宝剣と鎖鎌も、側にあった。ほこらの中からそっくりそのまま外に放り出されたようだ。命拾いをした…半蔵は安堵から力が抜けそうになった。二人は兼続の口中に射精した時のままの格好だ。半蔵は兼続の上から退いた。
兼続は、どこか安らかな顔で気を失っている。唇の端から、半蔵の放った精汁がわずかにこぼれていた。
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