半蔵×兼続
後編@
※本作品において、半蔵の一人称は「拙者」ではなく「俺」です。
※本作品には、男性向け18禁並のハードな性描写、女体化表現があります。ご注意下さい。
不意討ちで唇を奪った。紅い唇は、グミの実のように弾力があると思いきや、ふわふわと柔らかだった。無防備な隙間から己の舌を差し込み、濡れた舌と舌を絡ませる。溶けそうに甘い舌だ。驚きに硬直していた女の身体が、今更のように逃げをうつ。
ー 逃がさん ー
逃げ惑う兼続の身体と舌を半蔵は何処までも追いかけ、抱きしめて、己の唇に引き込む。やわやわと舌を吸ってやると、兼続の足が力を失い、がくりと、くずおれそうになる。半蔵は兼続の腰を抱き、ゆっくりと膝をつかせる。兼続は身体を震わせる。兼続の上唇を甘噛みしながら半蔵はその目をのぞきこんだ。涙に潤んだ兼続の瞳は、半蔵と目が合うと固く閉ざされた。目尻に涙がにじむ。目を閉じてさえいれば、自分を蹂躙する男はいずれ去って行く、そう思っているようだ。
ー 生娘、か ー
身体を調べずとも、兼続が処女である事は明らかだった。成り行きとはいえ、他国の忍に純潔を奪われる女を、半蔵は哀れに思った。だが、神の戯れの檻から逃れるには、他に道はない。半蔵に出来る事は兼続の破瓜の痛みを和らげてやる事だけだった。
他人から着物を剥ぎ取られる事が、こうも恐ろしい事だと兼続は初めて知った。あれよあれよと言う間に、半蔵は兼続の袴を脱がせ、小袖をはだけた。兼続の乳房に巻かれたサラシも解かれ、足元に落ちる。兼続は両手で裸の胸を隠した。しかし、その間に半蔵は兼続の下帯を緩めてしまった。兼続は男物の褌を身につけていた。半蔵に女としての裸体を見られるのが、兼続は怖くてならない。魅力のない身体だ、とため息を吐かれたら?もっと色の白い女子でなければ半蔵は抱く気が起こらないのではないか?乳も尻も出っ張り、たくましい腰の自分より、華奢な女子が好みではないのか。いや、それよりも…
「服部殿…は、服部殿は……」
奥方か、好いた女子がおいでなのか。途中で、言葉にするのが怖くなった。半蔵が是、と答えたなら、自分は…自分は?どうだというのだろう。兼続にはわからなかった。
「…なんだ、最後まで言え」
「いや!いいのだ」
考えまい。半蔵にいい人が居たとしても、今から自分は半蔵に抱かれるのだ。それだけは変わらない。だが、恐ろしい。身体を重ねるという事は、恐ろしくて堪らぬ…
兼続は敷き布の代わりに広げられた己の小袖の上に、半蔵の手で寝かされた。兼続は固く閉じていた目を薄く開けた。半蔵が、自らも忍び装束を脱ぎ捨てているのが目に入る。牡鹿のように引き締まり、しなやかな裸体のあちこちに、様々な古傷があった。昨夜負ったらしい、大きな青アザや血の滲む擦り傷に、兼続は申し訳ないような気持ちになる。傷だらけでも、肉体の造形の優美さは損なわれていない。半蔵と目が合った。兼続は再び目を固く閉じた。これ以上見続ければ、心の臓が口から飛び出そうだった。
「あ…あっ、う」
おかしな声を出すのを止められない。兼続の首筋を汗の雫が流れていく。背中に、男のたくましい胸を感じ、兼続は弾かれたようにみじろいだ。兼続は、横たわったまま、半蔵に背後から抱きしめられている。二人共何も身につけていない。半蔵は片腕で兼続を逃がさぬように抱き、もう片方の手は、兼続の身体をまさぐった。丸く盛り上がった尻肉を羽根のように柔らかく撫でまわし、太ももの裏まで手は滑り落ちていく。半蔵に触れられると、くすぐったいような感じがして、兼続はじっとしていられない。そのくすぐったさに身を委ねてしまえば深い悦びが訪れる気がするが、兼続にはまだそうする度胸がなかった。太ももの表に回った半蔵の手は、今度は下から上に向けて、撫で上げていく。股の間に手を差し込まれるのを止めようと、両の太ももをぴたりとくっつけた兼続だが、そんな事で男の愛撫を逃れる事はできない。股間に気を取られている兼続の乳房に、半蔵はそっと手を伸ばす。乳房など、女子にとってはさして感じる場所ではない。ただ一ヶ所を除いては。その、唯一悦い場所…乳首を半蔵の人差し指が押さえた。軽く指を当て、くにくにと動かす。
「あっ!んんっ…」
いじられているのは乳首なのに、何故、股間に耐え難い快を感じるのか、兼続にはわからない。だが、知識などなくても身体は男の愛撫に悦び、悶えた。兼続が乳房に気を取られれば、耳穴に舌を突っ込まれる。耳に気を取られれば尻肉を左右に広げられ、尻穴を露出させられた。半蔵の責めは兼続に休む間を与えず、快楽の袋小路に追い詰めていく。
兼続の息づかいが犬のように忙しなくなるのを見計らって、半蔵の手は兼続の股間に延びた。女子の身体の表面で一番敏感な場所、肉の真珠を守る貝殻をめくる。貝殻の内側はぬるぬるとした愛液に濡れていた。
「なっ…わ、私は粗相を…!?」
「違う…これは、女が男を受け入れる為の準備だ」
半蔵は、小水を漏らしたのかと焦る兼続の鼻先に、兼続の股間をなぞった指先を近づけた。濡れた指の間に愛液が糸を引いている。
「ひ…!」
小水ではないと安堵したものの、肉の真珠をかき回す男の指に、兼続はのけ反った。
「ひいっ…ひっ!あ、あああ!」
今までの愛撫など、おびえる兼続をなだめすかす為のものに過ぎなかったのだ。兼続がそう思うほど、肉の真珠への愛撫は激しい悦楽を連れてきた。
「や、やめてっ…くれ!狂ってしまう!こんな、あああああ…狂って…!!」
兼続の腰が前後に揺らめく。
「それで、いい…っ…悦いなら、狂え」
兼続の淫らな姿に半蔵も息を乱す。男を知らぬ生娘を、己の手で絶頂に導く興奮に、自らの欲望がたぎるのを半蔵は感じていた。女の純潔を奪った話を自慢気に語る輩を、半蔵は好かない。無責任に抱いて、無責任に孕ませ、あげく自分の子を産んだ女を簡単に捨てるのだ。そうやって放り出された女は死に、残された子供が……盗賊や、忍になる。自分の中にも浅ましい男の自尊心があった事を、半蔵は恥じた。だが…
ー 溺れそうだ… ー
忍の務めとしての範囲を越え、兼続を欲する自分の気持ちに、半蔵は戸惑っていた。忍ごときに純潔を奪われる生娘に対する同情だと自らに言い聞かせる。そのそばから、自分という男を兼続の身と心に刻みつけたい気持ちが沸き上がる。それに突き動かされ、愛撫は濃厚になっていった。
「ああっ…は、服部ど、の… 」
「半蔵だ」
兼続の、固く閉ざされた膣へ通じる扉へ、半蔵は指を浅く差し入れた。びくん、と兼続の腰が跳ねた。
「半蔵と呼べ。…お前の女としての名は?」
「お、思い、だせ…ない…だからっ…」
「わかった…兼続」
半蔵が「兼続」と言った瞬間、女の媚肉がまた震えて、新たな愛液が噴き出した。そのぬめりに乗じて、半蔵はもっと深く指を押し入れた。
「!?…い、痛いっ!こわ、い…」
兼続の桃色に上気した頬に口づけ、なだめながら、半蔵は肉の真珠への愛撫を再開する。爪で引っ掻いてしまわぬように、慎重に指を動かす。すると、兼続が肩越しに振り返り、おずおずとねだってきた。
「お、お願い…もっと…強く、いじっ…て」
半蔵は、女子の言葉づかいで恥じらう兼続に、一瞬、我を忘れるほど欲情した。兼続を仰向けに押し倒し、両足を思い切り開かせる。倒れ込むように兼続に覆い被さり、まだ解れきっていない身体に突き入れた。怒張した半蔵の肉棒は、鎌首の半分程しか侵入を果たせなかった。まばたき程の間の出来事である。
「い、痛い痛い!いやあっ…痛…」
兼続の両目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。半蔵は、冷水を浴びせられたように頭が冷えた。そっと己の一物を引き抜く。幸い、裂けてはいないようだ。丹念な愛撫が、全て水泡に帰すところだった。
「すまん、兼続、頭に血がのぼった」
「…どうして……」
悲しげな淡い瞳に見つめられ、半蔵はうっ、と詰まる。言わねばならないのか。言わねば、兼続の痛みと恐怖はぬぐえまい。
「すまん。お前が……可愛くて、我慢がきかなくなった」
兼続の目をしっかりと見つめ、詫びた。兼続の顔が、見る間に首筋まで真っ赤になる。またもや、兼続の両目から涙があふれた。
「…まだ痛むか?」
「ち、違う…嬉しくて…」
しばし、視線が絡み合い、それから二人の唇は、吸い寄せられるように重なった。兼続が舌を伸ばして、果敢に半蔵の口中に攻め入ってくる。舌の裏や、頬の内側をおっかなびっくりと舐め、半蔵の歯並びを確かめるように舌を這わせる。つたない蹂躙を半蔵は喜んで受け入れた。互いに飽く事もなく相手の唇を食み、唾液をすすり、舌を吸い合う。
長い口づけを終えた後、二人はためらいを脱ぎ捨てた。
破瓜の痛みは一瞬で、血は流れなかった。半蔵が慎重に指でほぐし、時をかけて押し入れたのが功をなしたようだ。さざ波のように静かに、半蔵が律動を始める。兼続に痛みはない。痛みはないが、快感もない。肉を押し広げられる。ただ、苦しかった。身体の芯に熱い楔を打ち込まれ、自由がきかないのが少し怖い。戦で槍に刺し貫かれた兵は、こんな心地なのかもしれない。兼続はちらりと思った。
兼続はしばらく青い顔で抜き差しに耐えていたが、ふと、半蔵の視線に気づいた。それは、仰向けで突かれている兼続の乳房に注がれている。宝剣をふるって戦う兼続の乳房は、筋肉に支えられて、横になっていても高く盛り上がっている。その魅惑的な丸みが、半蔵が抜き差しする度に淫らに揺れるのを彼は眺めているのだ。
「…私の乳を、見て…楽しい、か…?」
「ああ、楽しい」
半蔵は悪びれもせず答えた。兼続は激しい羞恥と同時に、女としてに求められる悦びを感じた。腕で乳房を覆い隠してしまいたい気持ちを必死で抑えて、兼続は半蔵に差し出すように胸を開いた。兼続の健気さに、半蔵は微笑み、つん、と尖った兼続の乳首を軽く噛んだ。
「あん」
甘えた響きに、声を出した当人が一番驚いた。半蔵の目がぎらりと光った。
それから、兼続は半蔵に散々鳴かされた。半蔵の手の中で兼続の乳房は様々に形を変えた。肌を這い回る舌や、肉の真珠をいたぶる指先に兼続はよがり泣いた。
「ああ…ああっ!…い、悦い…悦いの…」
早く、切ないほどの快感にとどめをさしてほしい。ぴん、と張りつめた兼続の足首を、半蔵が噛んだ。
「もっと欲しいか?」
「ちょうだい…」
腰が疼く。兼続は自ら男の身体に四肢を絡ませた。身体の中心をかき回される苦痛は、今やそれを上回る快感に塗り替えられていた。
半蔵の荒い呼吸が、最後の時が近いと知らせる。兼続は激しい律動に身を任せながら、その時を夢想する。もっと激しく突いて欲しかった。もっと激しく、もっと奥まで。そして
ー 私の中に注ぎ込んで ー
声に出してねだろうとして、兼続は違和感を覚えた。
ー 私は何を言うつもりだった?頼むなら逆だろう… ー
妊娠を避ける為には精を放つのを身体の外にしなければならない。そう頼むつもりだったのに、いつの間にか逆の事を考えていた。兼続は焦った。半蔵とて心得ているだろうが、念を押そうとした兼続の声を、半蔵の呟きがさえぎった。
「………め」
「えっ?」
「孕め…」
「は、半蔵?」
半蔵の目の色が変わっている。
「俺の、子をっ…産んでくれ……!!」
腰を叩き付けるように突き上げてくる。絶頂の時が来たのだ。
「やめて、お願い、やめてえぇっ!!!」
兼続の悲痛な叫びは、ほこらの薄闇に消えていく。
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